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実例

パーキンソン病に伴う誤嚥性肺炎 ― 薬効の波と嚥下機能の関係に着目したケース

前回の症例1では脳卒中後遺症の患者様をご紹介しました。今回は、当院でもう一つ頻度の高いパターンであるパーキンソン病に伴う誤嚥性肺炎の症例(個人が特定されないよう構成した典型的な複合症例)をご紹介します。パーキンソン病は脳卒中とは異なり、症状がゆっくり進行し、かつ薬の効果が出ている時間帯とそうでない時間帯で嚥下の状態が変動するという特徴があります。

症例:B様(70代・男性、仮名)

パーキンソン病と診断されて8年が経過しているB様。近年、動作の緩慢さに加え、食事に時間がかかるようになり、特に薬の効果が切れる時間帯(いわゆる「オフ時間」)に、飲み込みにくさや咳込みが目立つようになっていました。ご家族が「最近、食後に痰がらみの咳が続く」と気づかれ、微熱も伴っていたため受診されたところ、軽度の誤嚥性肺炎と診断されました。

当院での評価

パーキンソン病の嚥下障害は、口腔期(食べ物を口の中でまとめてのどへ送る段階)の動きの遅さと、咽頭期(のどを通過する段階)への送り込みのタイミングのずれが特徴とされています。当院では以下の評価を行いました。

  • 嚥下内視鏡検査(VE):内服薬の効果が出ている時間帯(オン時間)とオフ時間の両方で実施し、状態の変動を確認しました。
  • 反復唾液嚥下テスト(RSST):30秒間に唾液を何回飲み込めるかをみるスクリーニング検査で、嚥下反射の起こりやすさを簡易的に評価します。

B様の場合、オン時間には比較的問題なく嚥下できる一方、オフ時間には咽頭への送り込みの遅延と、喉頭侵入(食物が気管の入口付近まで達する状態)がみられました。

対処・介入

  • 服薬タイミングと食事時間の調整:神経内科の主治医と連携し、内服薬の効果が最も高い時間帯に主要な食事をとれるよう、服薬・食事スケジュールを調整しました。
  • 食形態の調整:オフ時間帯を考慮し、まとまりやすく咽頭通過のしやすいゼリー状・ペースト状の食品を中心に提案しました。
  • 嚥下リハビリテーション:言語聴覚士による嚥下訓練に加え、パーキンソン病では発声・呼吸機能の低下も嚥下に影響するため、呼吸訓練や発声訓練(プッシング訓練など)も併用しました。
  • 姿勢調整:体幹の傾きが出やすいため、食事時の座位姿勢(クッション等を用いた体幹の安定)を理学療法士とともに調整しました。

経過

主治医との連携による服薬・食事タイミングの調整と嚥下リハビリを継続した結果、オフ時間帯のむせ込みの頻度が減少し、肺炎の再発なく経過されています。

※ パーキンソン病は進行性の疾患であり、将来的に嚥下機能がどう変化するかは個人差が大きく、現時点では確定的な予測はできません。定期的な評価を継続しながら、状態に応じて食形態やリハビリ内容を見直していくことが重要です。

ご家庭でできる予防・観察のポイント

  • 内服薬の効果が出ている時間帯に合わせて食事のタイミングを調整する
  • 「薬が効いていない時間帯に食べにくそうにしていないか」を観察する
  • 声の小ささ、むせ、食事時間の延長など、わずかな変化も主治医・言語聴覚士に相談する
  • 誤嚥性肺炎の既往がある場合は、定期的な嚥下機能の評価を受ける

おわりに

パーキンソン病に伴う嚥下障害は、脳卒中後遺症とは異なり「薬の効果による変動」という特有の視点が必要です。ご本人・ご家族だけで判断せず、神経内科の主治医や嚥下の専門機関と連携しながら対応していくことが大切です。

※ 本記事は特定の患者様の症例ではなく、個人が特定されないよう構成した典型的な複合症例です。治療経過や将来の見通しには個人差があり、本記事の内容が特定の予後を保証するものではありません。

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