訪問歯科診療は保険が使える?自己負担の目安と交通費・対応エリアの決まり
「訪問で歯科をお願いしたいけれど、保険は使えるのだろうか」「費用がどのくらいになるのか見当がつかないので、問い合わせをためらってしまう」——ご家族の口もとや飲み込みが気になりはじめた方から、費用についてのご質問をいただくことがあります。
訪問歯科診療は、条件にあてはまれば健康保険が使えます。ただし「誰でも使える」わけではなく、対象になる方や距離について、国の決まりがあります。ここでは、保険が使えるのはどんなときか、窓口でのお支払いはどう決まるのか、交通費や対応エリアの考え方までを、東京都世田谷区・自由が丘エリアの go-en.デンタルクリニックが整理してご説明します。
なお、訪問歯科診療そのものの対象や受けられる診療内容については、訪問歯科診療とは?対象になる方と受けられる診療内容でご説明しています。この記事は、そのうち費用と保険のしくみにしぼって詳しくお伝えします。
訪問歯科診療に健康保険が使えるのは、どんなとき
健康保険が適用される訪問歯科診療(歯科訪問診療)には、診療報酬の決まりのうえで対象が定められています。厚生労働省保険局医療課の通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号)別添2「歯科診療報酬点数表に関する事項」のC000 歯科訪問診療料の項に、その考え方が示されています。
判断の軸は「通院による歯科治療が困難かどうか」
同通知では、歯科訪問診療料は「在宅等において療養を行っており、疾病、傷病のため通院による歯科治療が困難な患者」を対象としており、通院が容易な方に対して安易に算定できないものとされています。あわせて、通院による歯科治療が困難な場合以外で訪問診療の必要性を認められない場合には、歯科訪問診療料も歯科診療にかかる費用も算定できない、とも定められています。
つまり、「近いから来てほしい」「待合室で待つのが面倒だから」といった理由では、保険の訪問診療にはなりません。判断の軸は、病気やけがのために通院して歯科治療を受けることが難しい状態かどうか、という一点です。生活の場から外へ出ること自体に介助や付き添いが要る、移動の負担が大きく診療にたどり着く前に消耗してしまう、といった状況が想定されます。
「要介護認定を受けていないと使えないのでは」というご質問をよくいただきますが、認定の有無は通知の要件として書かれていません。通知が示しているのは、あくまで「疾病、傷病のため通院による歯科治療が困難」かどうかです。認定を受けていない方でも、通院が難しい事情があればご相談いただけます。
「在宅等」にはご自宅だけでなく施設も含まれます
同通知では、ここでいう「在宅等」に介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどが含まれるとされています。ご自宅にお住まいの方だけでなく、施設で暮らしている方も対象になり得るということです。
また、療養中の患者さんが屋外へ移動することを伴わない屋内で診療を行った場合に限り算定する、とも定められています。あくまで、生活の場の屋内でうかがう診療である、ということになります。
窓口でのお支払いは、どのように決まるのか
自己負担割合は、年齢と所得によって法律で決まっています
訪問歯科診療は健康保険の対象ですので、窓口でお支払いいただくのは、かかった医療費のうち法令で定められた自己負担割合の分です。この割合は医院が決めるものではなく、加入している制度と年齢・所得によって法律で定まっています。
- 会社の健康保険・国民健康保険など(健康保険法第74条、国民健康保険法第42条)……70歳に達する日の属する月以前は3割(義務教育就学前は2割)。その翌月以後は2割で、政令で定める基準以上の所得(報酬)がある場合は3割とされています。
- 後期高齢者医療制度(高齢者の医療の確保に関する法律第67条)……原則1割。所得が政令で定める額以上の場合は2割、さらに一定の場合は3割とされています。
ご自身やご家族がどの割合にあたるかは、マイナ保険証や資格確認書で確認できる資格情報、または加入している保険者からの通知でご確認ください。
医療保険と介護保険の「二本立て」になることがあります
訪問歯科では、医療保険だけでなく介護保険がかかわることがあります。介護保険法第8条第6項では「居宅療養管理指導」を、居宅で介護を受けている要介護者について、病院・診療所・薬局の医師、歯科医師、薬剤師などにより行われる療養上の管理および指導であって厚生労働省令で定めるもの、と定義しています。
おおまかにいえば、むし歯の処置や入れ歯の調整といった治療そのものは医療保険で行い、歯科医師や歯科衛生士がご本人・ご家族・介護職に対して行う療養上の管理や助言の一部が、介護保険の居宅療養管理指導として扱われることがある、という関係です。要支援の認定を受けている方では介護予防居宅療養管理指導という名称になります。
「請求が2種類あって分かりにくい」と感じられるかもしれませんが、同じ診療の内容について二重にご請求することはありません。ただし、医療保険にあたる部分と介護保険にあたる部分では、それぞれに自己負担が生じます。どの部分がどちらの保険にあたるかは、診療の内容が決まった段階でご説明します。
交通費と、16キロメートルという距離の決まり
交通費は実費とされています
前述の通知では、歯科訪問診療料の「注13」に規定する交通費は実費とすると定められています。訪問歯科衛生指導料についても同様に、交通費は実費とすると書かれています。つまり、診療そのものの費用(保険点数にもとづく自己負担分)とは別に、うかがうためにかかった交通費が発生し得るということです。
交通費が発生し得るかどうかや、実際の進め方については、ご住所とご状況をうかがったうえでご案内します。費用について気になる点は、お問い合わせの段階で遠慮なくおたずねください。
半径16キロメートルの圏域という考え方
同じ通知には、距離についての決まりも書かれています。保険医療機関の所在地と患家の所在地との距離が16キロメートルを超える歯科訪問診療は、その医療機関からの歯科訪問診療を必要とする絶対的な理由がある場合に認められるものとされ、その根拠がなく、特に患家の希望により16キロメートルを超えて訪問した場合の歯科訪問診療は、保険診療としては算定できないことから患者負担とする、と定められています。
ここでいう「16キロメートルを超えた場合」とは、当該保険医療機関を中心とする半径16キロメートルの圏域の外側に患家が所在する場合をいう、とも書かれています。道路をたどった距離ではなく、直線で考える、ということです。
これは保険診療のルールのうえでの上限です。実際にどこまでうかがえるかは、それとは別に、訪問の体制によって医院ごとに決まります。当院の場合、保険での訪問診療は世田谷区を中心とした近隣エリアが対象です。保険の範囲で受けられる診療の内容については、保険の摂食嚥下診療のページでご説明しています。
保険で受けられること、保険の枠の外になること
保険診療には範囲があります
健康保険で行える診療には範囲が定められており、お口や飲み込みの状態、全身の状態によって、行える内容は変わります。訪問先では持ち運びのできる機器を使うため、大がかりな外科処置など、そもそも訪問では行いにくい診療もあります。何ができて何ができないかは、実際にお口の状態を確認したうえでご説明します。
保険の枠の外になる診療について
健康保険の対象とならない診療は、公的医療保険が適用されないため、費用は全額が自己負担になります。なお、診療の効果や改善の程度には個人差があり、結果を保証するものではありません。
費用の考え方は料金についてのページにまとめています。保険の対象になるかどうかは、お口や全身の状態によって変わりますので、ご不明な点は遠慮なくおたずねください。
費用のご相談をスムーズにするために
お手元で確認しておいていただけると助かること
お問い合わせの前に、次の点をご確認いただけると、費用のご案内が具体的にできます。
- 自己負担割合……マイナ保険証(健康保険証としての利用登録をしたマイナンバーカード)や資格確認書で確認できる資格情報、または保険者からの通知に記載されています。従来の健康保険証は有効期限が終了していますので、受付ではこのいずれかをご提示いただくことになります。
- 要介護度……介護保険被保険者証をお持ちであれば、居宅療養管理指導のかかわり方をご説明しやすくなります。
- ご住所(どのエリアか)……保険で対応できる範囲かどうかを、早い段階でご案内できます。
- 通院がどのくらい難しい状況か……保険の対象になりそうかどうかの判断に直結します。
ご相談から診療がはじまるまでの流れはご相談の流れのページにまとめています。初回の訪問にご用意いただくものについては、訪問歯科診療とは?対象になる方と受けられる診療内容でご案内しています。
まずはご相談ください
費用のことは、聞きにくいと感じられるかもしれません。けれど、あとから「思っていたのと違った」となることのほうが、ご本人にもご家族にも負担になります。当院では、ご相談の段階で保険の対象になりそうかどうかをご案内しています。保険の枠を外れる自由診療(自費)は公的医療保険が適用されず全額自己負担で、自費の嚥下診療(訪問)は、ご自宅・施設へ伺って摂食嚥下の評価、嚥下訓練とご本人・ご家族への指導、お口のケアを行うもので、初回22,000円(税込)・2回目以降16,500円(税込)、標準的な4〜6回の場合、期間はおおよそ3か月程度・総額71,500円〜104,500円(税込)程度が目安です(別途、交通費の実費)。嚥下健診(デンタルドック)は、飲み込み・お口の状態を確認し、結果にもとづくご説明・今後に向けたアドバイスを行う健診で、16,500円(税込)・当日1回で完了します。評価や訓練の際にまれにむせ込み・一時的な疲労・不快感が生じることがあり、全身の状態によっては行える内容が制限される場合があります。診療の効果や改善の程度には個人差があり、結果を保証するものではありません。ご不明な点はお電話(03-6459-7970)またはご相談フォームからお問い合わせください。詳しくは料金についてのページもご覧ください。
ご本人・ご家族はもちろん、施設のご担当者さまやケアマネジャーさまからのご相談もお受けしています。当院は、誤嚥性肺炎に長年向き合ってきた歯科医が担当し、一般社団法人 日本誤嚥性肺炎予防協会に加盟しています。東京都世田谷区・自由が丘エリアで、ご家族の通院と費用にお困りのときは、まずはご相談ください。


