誤嚥性肺炎とは?原因と症状、お口のケアでできる予防のことを歯科が解説
「また肺炎で入院してしまった」「熱はないけれど、なんとなく元気がない」——ご高齢のご家族にそんな様子が見られるとき、その背景に誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)が関わっていることがあります。飲み込む力の変化と深く結びついた肺炎で、典型的な症状が出にくいことも特徴です。この記事では、誤嚥性肺炎とはどういうものか、原因や気づきにくい症状、そしてお口のケアや食事の工夫でできることを、摂食嚥下障害の訪問診療を行う立場から整理します。
誤嚥性肺炎とはどんな病気?
まず、言葉の整理から始めます。
「誤嚥」と「誤嚥性肺炎」の関係
日本呼吸器学会の解説によると、物を飲み込む働きを嚥下(えんげ)機能といい、口から食道へ入るべきものが気管に入ってしまうことを誤嚥といいます。そして誤嚥性肺炎は、嚥下機能の障害のために、唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道へ誤って吸い込むことで発症するとされています。
つまり誤嚥性肺炎は、食べ物が気管に入ってしまうことだけでなく、細菌を含んだ唾液や食べ物が肺に入り込むことも大きく関わると考えられています(嘔吐などで食物と胃液を一度に多く誤嚥して発症する場合もあるとされています)。ここが、お口の状態と深く関わってくる理由でもあります。飲み込みの仕組みそのものについては、摂食嚥下障害とはのページでも解説しています。
どんな方に起こりやすいのか
同学会は、誤嚥性肺炎は嚥下機能の低下した高齢者、脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患のある方、寝たきりの患者に多く発生するとしています。原因となる菌は、肺炎球菌や、口の中の常在菌である嫌気性菌が多いとされています。
発症の仕組みについても、次のように説明されています。高齢の方や神経疾患などで寝たきりの方では口の中の清潔が十分に保たれていないことがあり、その場合、口の中で肺炎の原因となる細菌がより多く増えてしまいます。さらに咳反射が弱くなって嚥下機能が低下することで、口の中の細菌が気管から肺へと吸い込まれ、肺炎を発症すると考えられています。栄養状態が良くないことや、免疫機能の低下も発症に関わってくるとされています。
気づきにくい症状——「元気がない」だけのことも
誤嚥性肺炎で、ご家族にいちばん知っておいていただきたいのが、この点です。
典型的な肺炎の症状が出ないことがある
日本呼吸器学会は、発熱・咳・膿のような痰が肺炎の典型的な症状としたうえで、誤嚥性肺炎ではこれらの症状がなく、「なんとなく元気がない」「食欲がない」「のどがゴロゴロとなる」といった非特異的な症状のみがみられることが多いのが特徴だとしています。
「熱がないから大丈夫」「むせていないから平気」とは限らない、ということです。ご家族から見て「いつもと様子が違う」と感じたら、その違和感は大切な手がかりになります。
くり返すことがあります
予後についても、高齢の方や中枢神経系の障害などで寝たきりの患者に発症し、慢性的にくり返し発症する場合もあるため、予後不良の場合も少なくないと説明されています。一度落ち着いても、飲み込む力や口の中の環境がそのままであれば、同じことが起こりうるということです。だからこそ、治ったあとの「くり返さないための備え」が大切になります。
なお、ここに書いているのは一般的な情報です。実際の診断や治療は医科の医療機関で行われます。気になる症状があるときは、まずかかりつけの医師にご相談ください。
お口のケアと食事の工夫でできること
誤嚥性肺炎の治療は抗菌薬による薬物療法が基本とされていますが、同学会は同時に口腔ケアの徹底、嚥下指導も重要だとしています。歯科がお手伝いできるのは、まさにこの部分です。
口の中の細菌を減らす
先ほどの発症の仕組みのとおり、口の中で肺炎の原因となる細菌が増えている状態は、誤嚥が起きたときの負担につながると考えられています。歯みがきや義歯(入れ歯)の清掃、舌や粘膜のケアなど、日々のお口の清掃がその土台になります。ご自身での清掃が難しくなってきた場合は、歯科によるお口のクリーニングや、ご家族・介護者の方への具体的なケア方法のご案内もできます。
お口とのどの働きを保つ
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、舌や唇、頬の動きを保つために、パ・タ・カ・ラと発音する口腔機能訓練や口腔体操などを続けること、そして定期的な歯科受診で、むし歯や歯周病の治療だけでなく、咀嚼や嚥下、舌や唇の動き、口の乾燥などをチェックしてもらうことが紹介されています。
また同サイトでは、高齢の方が多くの歯を失うことで咀嚼機能や嚥下機能が低下し、十分な栄養が摂れなくなると低栄養のリスクが高まり、それがサルコペニアなどを通じて要介護となるリスクを高める、とも説明されています。お口の働きを保つことは、飲み込みだけでなく、体力や栄養の面からも意味があると考えられています。
食事のときの姿勢と食べ方
日本呼吸器学会は生活上の注意として、介護者は食事の際に十分に上体を起こし、ゆっくりと咀嚼・嚥下するよう指導することが大切だとしています。あわせて、喫煙は気道粘膜の浄化を抑制し細菌が付着しやすくなるとされるため禁煙が重要であること、誤嚥防止のリハビリテーションも有効とされること、肺炎球菌のワクチンも受けておくべきであることが挙げられています。
食事の姿勢、一口の量、食べ物の形態(きざみ・とろみなど)は、その方の飲み込みの状態によって適切なものが変わります。ご自宅や施設での「いまの食べ方」が合っているかどうかは、実際に食事の様子を拝見しないと判断できない部分です。
なお、こうしたケアや工夫の効果には個人差があり、結果を保証するものではありません。
ご家族・施設の方が気になったときは
「肺炎をくり返している」「食事の様子が心配だけれど、病院まで連れて行くのが難しい」——そうしたときは、歯科が伺うという方法があります。
通院が難しい方には訪問という選択肢があります
go-en.デンタルクリニックでは、摂食嚥下障害の訪問診療を主軸に、ご自宅や施設へ伺っています。保険での訪問診療は世田谷区を中心とした近隣が対象で、自費での訪問診療は東京都・神奈川県の全域に対応しています。対応の可否はエリアやご状況によりますので、お問い合わせください。詳しくは訪問診療(自費)と保険の訪問診療のページをご覧ください。
なお、自費(自由診療)は公的医療保険が適用されず、全額自己負担となります。回数・期間の目安と主なリスク・副作用については料金についてのページでご案内しています(費用は確定しだい同ページに掲載します。それまでは初回のご説明時にお伝えします)。
通院ができる方は、外来(完全予約制)でも承っています。ご本人の状態やご家族の事情に合わせて、どちらがよいかを一緒に考えます。
まずはご相談ください
「これは相談していいことなのだろうか」という段階で構いません。むせが増えてきた、食事に時間がかかるようになった、肺炎で入院したことがある——そうしたご様子をうかがったうえで、いま何ができるかをご一緒に考えます。ご家族だけで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
