ドライマウス(口の乾き)で飲み込み・入れ歯はどう変わる?原因と対処
「最近、口の中がいつも乾いている」「パンやおせんべいが食べにくくなった」「食事のたびにお茶がないと飲み込みにくそう」——ご自身や高齢のご家族のことで、こうした変化が気になっている方もいらっしゃると思います。口の乾き(ドライマウス)は、唾液の量が減ることで起こり、食べる・飲み込む・入れ歯を使うといった毎日の動作にも影響することがあります。
この記事では、ドライマウスとは何か、考えられる原因、飲み込みや入れ歯との関係、ご家庭でできる工夫と相談先を、日本歯科医師会や8020推進財団の資料をもとに、摂食嚥下障害の診療を主軸とする東京都世田谷区・自由が丘エリアの go-en.デンタルクリニックが整理してご説明します。
ドライマウス(口の乾き)とは
唾液の量が減って、口の中が乾いた状態です
日本歯科医師会のサイト「テーマパーク8020」では、ドライマウスは、さまざまな原因で唾液の分泌量が低下し、口の中が乾燥する病気と説明されています。一方、日本歯科医師会のWEBマガジン「朝昼晩」の解説では、ドライマウスは病気ではなく乾燥している状態のことをさす、とも説明されています。資料によって言い方は異なりますが、室内の乾燥や口呼吸などで一時的に乾くこともあれば、病気や体の変化、お薬などが背景にあって乾いた状態が続くこともある、ということです。
唾液には、食べる・飲み込むための大切な働きがあります
8020推進財団の「8020読本」では、唾液の働きとして次のようなものが挙げられています。
- お口の中の乾燥を防ぐ
- 消化を助ける
- 食べ物を飲み込みやすくする
- 発音をなめらかにする
- 食べかすを洗い流す
- お口の中の細菌の増殖を抑える
- 入れ歯の密着度を高める
唾液が減ると、こうした働きが弱まります。口の乾きは「少し不快なだけ」と見過ごされがちですが、食事やお口の清潔にもかかわる変化として受け止めることが大切です。
口が乾く原因として考えられること
いくつかの要因が重なって起こることがあります
テーマパーク8020では、ドライマウスは糖尿病や腎不全などの病気を介して起こることもあれば、ストレスや筋力の低下、さらには薬剤の副作用で起こることもあり、複合的な病因によって発症すると説明されています。また、ドライマウスの症状は膠原病の一つである難病のシェーグレン症候群でもあらわれる、とされています。
「朝昼晩」の解説では、継続的なドライマウスの要因として、シェーグレン症候群、服用している薬の副作用、加齢(唾液を分泌する唾液腺は年齢と共に萎縮して分泌量が減少する)、放射線治療による唾液腺の萎縮の4つが挙げられています。これら以外に、室内の乾燥、口を開けたままの居眠り、口呼吸といった物理的な要因でも乾燥する、とされています。
お薬の影響も考えられます。自己判断で中止しないでください
「朝昼晩」の解説では、一般内科で処方される薬の約800種類が、口の乾燥を引き起こす可能性があると説明されています。8020推進財団の「8020読本」では、降圧剤、抗うつ剤、抗ヒスタミン薬、鎮静剤、睡眠薬、利尿薬、潰瘍治療薬、パーキンソン病治療薬などを服用していてお口が乾きやすいときは、担当医に相談するよう呼びかけられています。
お薬にはそれぞれ必要な理由があって処方されています。口が乾くからといって、ご本人やご家族の判断で服薬をやめたり減らしたりしないでください。気になるときは、処方した主治医や薬剤師に「口が乾く」「食事が食べにくくなった」といった変化を伝えて相談しましょう。
高齢になると乾きやすくなります
8020読本では、高齢になると噛む力の低下や薬剤の影響などによって唾液の分泌量が減るため、お口が乾く、食事がとりにくい、発音がしにくいなどの症状が現れやすくなると説明されています。やわらかい物ばかり食べて噛む回数が減ることも、唾液が出にくくなる一因と考えられています(テーマパーク8020では、かむという行為は唾液の分泌を促すと説明されています)。
口の乾きと、飲み込み・入れ歯の関係
食べ物がまとまりにくく、飲み込みにくくなることがあります
テーマパーク8020では、ドライマウスには口の中の粘つき、舌の痛み、口臭などの症状のほか、乾いた食品を食べられない、食べ物をうまく飲み込めないといった症状がある、と説明されています。噛んだ食べ物は唾液と混ざってまとまり、飲み込みやすい形になります。唾液が少ないと、パンやいも類、焼き魚のようなパサつく食べ物がまとまりにくく、口の中や頬の内側に残りやすくなることがあります。飲み込みのしくみについては「飲み込みにくい」が続くのはなぜ?嚥下の5つの段階と考えられる原因で、口に食べ物が残る様子については食べ物が頬や口の中に残るのはなぜ?考えられる原因と食後の口腔ケアでご説明しています。
入れ歯が外れやすい・当たって痛いと感じることも
8020読本では、唾液の働きの一つに「入れ歯の密着度を高める」ことが挙げられています。唾液が減ると、入れ歯が安定しにくくなり、外れやすく感じることがあります。ただ、入れ歯が外れやすい・痛いといった症状は、あごの骨や歯ぐきの変化で入れ歯の合いが悪くなっている場合にも起こります。どちらが関係しているかは、お口と入れ歯の状態を確認してみないと分かりません。入れ歯の合いについては入れ歯が合わなくなってきたのはなぜ?痛い・外れやすいときのサインと対処もあわせてご覧ください。
お口の汚れや感染にもつながりやすくなります
テーマパーク8020では、口の中が乾くと唾液の持っている自浄作用が失われ、通常よりも感染症になりやすくなること、特に高齢者は、そのまま放置しておくと、食べ物を飲み込む能力が低下する摂食嚥下障害から重篤な病気になりかねないことが説明されています。「朝昼晩」の解説でも、高齢者の場合は、自浄作用の低下で口腔内に菌が増え、それを飲み込むことで誤嚥性肺炎を発症するケースもある、とされています。口の乾きに気づいて、お口の清潔と潤いを保つことは、誤嚥性肺炎の予防にもつながると考えられています。
毎日きちんと歯磨きをしているのに口の中がネバネバする、舌に汚れがつく、といった様子から口の乾きとお薬の関係を考えた経過は、当院の症例紹介(臨床でみられる経過をもとに構成した架空の複合症例)「口が汚れている」のではなく「唾液が出なくなっていた」― 薬の副作用も含めて考えた口腔乾燥と誤嚥性肺炎でご紹介しています。
ご家庭でできる工夫
気づきやすいサイン
ご本人が「口が乾く」とはっきり言わないこともあります。次のような様子が続いていないか、食卓や日々の会話で気にかけてみてください。
- 「口が乾く」「口の中がネバネバする」「舌がヒリヒリする」と言う
- 食事中に何度もお茶や水を飲む、水分がないと食べにくそうにしている
- パンやおせんべいなど、水分の少ない食べ物を避けるようになった
- 食べ物が口の中や頬の内側に残っている
- 入れ歯が外れやすいと言うようになった
- 夜中に口の乾きで目を覚ます、お薬の種類が最近増えた
「朝昼晩」の解説では、乾燥が一時的か継続的かを確認する方法として、口を開けて20秒ほどそのままでいてみる、というやり方が紹介されています。唾液が出てこず、下唇の裏側あたりがパリパリに乾く場合は、ドライマウスの可能性があるとされています。あくまで目安で、診断の代わりにはなりません。
毎日の工夫
日本歯科医師会や8020推進財団の解説では、次のような工夫が挙げられています。
- 食事のときによく噛む(噛むことで唾液の分泌が促されます)
- 唾液腺のマッサージ(耳の前から顎の角を通って頬のあたりまでを、頬の中心に向かって指先で押し流すように。入浴時などリラックスしているときに)
- 室内の乾燥や口呼吸が原因のときは、加湿器を置く・マスクをするなど環境を整える
- 日常的な歯みがきと舌のセルフケア、うがいをしっかり行う。洗口液を使う場合はアルコールフリーのものを選ぶ
- 乾燥が気になるときは、口腔内を保湿する口腔湿潤剤を活用する
- 歯科医院での定期的なクリーニングを受ける
乾いた粘膜を強くこすると傷つけることがあるため、舌や粘膜のお手入れはやさしく行ってください。むせやすい方やうがいが難しい方は、水を多く使うとかえって誤嚥のもとになることがあるため、拭き取りを中心にした方法を歯科にご相談ください。口腔湿潤剤は、乾いて残ったものの上から塗り重ねると固まってしまうことがあるため、古いものや汚れを取り除いてから使います。また、口の乾きの背景に、飲む量が減って水分が足りていないことがある場合もあります。一方で、心臓や腎臓の病気などで水分の量に注意が必要な方もいるため、どのくらい水分をとればよいかは主治医にご相談ください。口腔ケア全体の進め方は高齢者の口腔ケアはなぜ大切?誤嚥性肺炎の予防と毎日のケアのコツでご説明しています。
どこに相談すればよい?
歯科と、主治医(医科)の両方がかかわります
テーマパーク8020では、ドライマウスの診断の中心的な役割を果たすのは歯科医で、問診・触診のほか、口腔内診査や唾液量検査などを用いて複合する病因を特定していく、と説明されています。そのうえで、ドライマウスは全身疾患のひとつの症状として口腔に現れることが多く、歯科と医科の連携が非常に重要とされています。たとえば降圧剤を服用している場合は循環器内科と連携して薬剤の変更や減量で対処すること、シェーグレン症候群と診断されれば膠原病を専門とする内科医の協力を得ることが挙げられています。
口の乾きが続く、食事がしにくくなってきたと感じたら、まずはかかりつけの歯科医院に相談し、お薬や持病がある方は主治医にも伝えておくと安心です。お薬の変更や中止を判断するのは、処方した医師です。
救急車(119番)をすぐ呼ぶとき・迷うときの相談先
食事中などに物をのどにつまらせた、急な息切れや呼吸困難があるといったときは、様子を見ずにすぐに救急車(119番)を呼んでください。消防庁のリーフレット「救急車を上手に使いましょう」では、高齢者の「ためらわず救急車を呼んでほしい症状」として、物をのどにつまらせた、急な息切れ・呼吸困難、意識がない(返事がない)またはおかしい(もうろうとしている)、顔半分が動きにくい・しびれる、ろれつがまわりにくい、突然の高熱などが挙げられ、そのほか「いつもと違う場合、様子がおかしい場合」も挙げられています。同じリーフレットでは、高齢者は自覚症状が出にくい場合もあるとして注意が呼びかけられています。
救急車を呼ぶか迷うとき、夜間や休日にどこを受診すればよいか分からないときは、東京都にお住まいの方は、東京消防庁救急相談センター(#7119)に相談できます(24時間・365日。自動音声のあと「2」を押すと救急相談、「1」を押すと医療機関の案内につながります。対象地域は東京消防庁のページでご確認ください)。東京都以外にお住まいの方は、お住まいの地域の救急相談窓口をご確認ください。同じリーフレットでは「迷ったら『かかりつけ医』に相談しましょう」とも呼びかけられています。急ぎではないものの、痰が増えた・微熱が続くなど体調が気になるときは、まずかかりつけ医(主治医)にご相談ください(上に挙げたような症状があるときは、ためらわず119番を呼んでください)。
歯科でお手伝いできること
当院は摂食嚥下障害の診療を主軸としています。口の乾きのご相談では、お口の乾燥の様子や汚れのつき方、入れ歯の状態に加えて、噛む・飲み込むといったお口の働きも確認し、お口の清潔と潤いを保つケアの方法や、食べやすい食事の工夫をご提案します。お薬や持病が関係していそうなときは、必要に応じて主治医や薬剤師と情報を共有します(当院がお薬の内容を単独で変更することはありません)。入れ歯やお口のトラブルについては、まずは保険診療でのご相談が可能です(保険の摂食嚥下診療)。なお、診療の効果や改善のあらわれ方には個人差があり、結果を保証するものではありません。
通院が難しい方には、訪問診療という方法があります。健康保険による訪問診療は世田谷区を中心とした近隣エリア(診療内容に応じた保険点数のほか、交通費等が別途かかる場合があります)、自由診療(自費)による訪問診療は東京都・神奈川県の全域が対応の目安です。ご自身で通院できる方は、外来(完全予約制)でも承っています。
自由診療(自費)は公的医療保険が適用されず、全額自己負担となります。自費の嚥下診療(訪問)は、ご自宅・施設へ伺って摂食嚥下の評価、嚥下訓練とご本人・ご家族への指導、お口のケアを行うもので、初回22,000円(税込)・2回目以降16,500円(税込)、標準的な4〜6回の場合、期間はおおよそ3か月程度・総額71,500円〜104,500円(税込)程度が目安です(別途、交通費の実費をいただきます)。嚥下健診(デンタルドック)は、飲み込み・お口の状態を確認し、結果にもとづくご説明・今後に向けたアドバイスを行う健診で、16,500円(税込)・当日1回で完了し、回数の目安は1回です(ご自宅・施設へ伺って受けられる場合は、別途 交通費の実費をいただくことがあります)。評価や訓練の際にまれにむせ込み・一時的な疲労・不快感が生じることがあり、全身の状態によっては行える内容が制限される場合があります。期間・回数は標準的な目安で、飲み込みの状態やご希望により前後し、体調の変化などにより計画を変更・中止する場合があります。診療の効果や改善の程度には個人差があり、結果を保証するものではありません。ご不明な点はお電話(03-6459-7970)またはご相談フォームからお問い合わせください。詳しくは料金についてのページもご覧ください。
まずはご相談ください
口の乾きは、加齢やお薬、病気、口呼吸など、いくつかの要因が重なって起こることが多く、「年のせい」と片づけてしまいがちです。ただ、唾液が減ると、食べ物がまとまりにくくなったり、入れ歯が安定しにくくなったり、お口の中が汚れやすくなったりと、食べることにも影響が出てきます。「いつごろから乾くようになったか」「どんな食べ物が食べにくくなったか」「最近増えたお薬はあるか」を伝えていただくだけでも、確認の手がかりになります。当院は、誤嚥性肺炎の患者さんに長年向き合ってきた歯科医が担当し、一般社団法人 日本誤嚥性肺炎予防協会に加盟しています。東京都世田谷区・自由が丘エリアで、ご家族の口の乾きや食事の様子にご不安があるときは、まずはご相談ください。


